近視進行抑制治療
自己負担診療
当院では学童期の近視進行抑制治療を行っております。
近視とは、遠くを見るときにピントが網膜より前に結んでしまい像がぼやける状態です。子供の近視進行は眼球が楕円形に伸びてしまうこと(眼軸長が伸びる)が主な原因です。一度眼軸が伸びてしまうと元に戻ることはありません。高度の近視になると、黄斑変性症、緑内障、網膜剥離などの疾患のリスクが高くなる可能性があります。眼軸長の伸びを抑えることが近視の進行を抑制するためには重要です。
普通の眼鏡では眼軸の延長を抑えることはできません。
近視進行抑制治療法には、次の3種類の方法を行っています。
- 低濃度アトロピン点眼治療
- オルソケラトロジー
- 多焦点ソフトコンタクトレンズ
1、アトロピン0.01%/0.025%点眼治療(自由診療)
低濃度アトロピン点眼の効果・特徴
低濃度アトロピン0.01%/0.025%点眼液は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の伸展を抑制する)という点で統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されている治療法の一つです。
□重篤な副作用の報告はありません。※
この薬の本来の作用により瞳孔(黒目)が大きくなりまぶしく感じますが、数時間で元に戻りますのでご心配ありません。
□近視の進行を平均約60%軽減させる良好な点眼液と言われています。※
近視の進行が完全に止まる訳ではありませんが、少なくとも2年間治療を継続すると何もしない方に比べて近視の進行を軽減できる可能性があります。
低濃度アトロピン点眼液は、最適な超低濃度(0.01%または0.025%)を点眼することにより、近視の進行を効果的に抑制すると同時にアトロピン1%点眼液のような不快な副作用を回避します。オルソケラトロジーと併用するとより効果的と報告されています。
近視の矯正効果はありませんので、視力が回復するわけではありません。
低濃度アトロピン0.01%/0.025%点眼の安全性
シンガポール国立眼科センター(SNEC)の研究によると、アトロピン0.01%の効果は点眼を2年間継続した後のものです。※
- アレルギー性結膜炎および皮膚炎の報告はありませんでした。
- 眼圧に影響を与えないとの報告でした。
- 白内障を形成するとの報告はありませんでした。
- 点眼終了後も目の遠近調節機能の低下、また瞳孔が開き続けるとの報告はありませんでした。
- 電気生理学上、網膜の機能に影響を与えるとの報告はありませんでした。
6、本製品はGMP(医薬品製造管理及び品質管理基準)準拠の工場で製造されています。
※
治療方法
低濃度アトロピン点眼(0.01%アトロピン点眼液または0.025%アトロピン点眼液)
点眼方法:両眼に1日1回寝る前に点眼(1か月に1本使い切り)
このようなお子様にお勧めです
軽度または中等度の近視の方
6歳から12歳の学童期
1~3か月に1回定期的に受診し、検査、診察を受けて頂きます。
費用
この治療は自由診療です(保険診療と同日の処方はできません。後日処方となります)。
検査料 1,650円(税込)
薬剤費 0.025%マイオピン 1本3,190円(税込)
目薬は開封して1か月したら破棄して頂きます(感染症などのリスクをさけるため残量があっても破棄してください)。
2、オルソケラトロジー(自由診療)
オルソケラトロジーは特殊な酸素透過性ハードコンタクトレンズを就寝時に装用することで角膜上皮の形状を変化させ、良好な裸眼視力が得られ、日中は裸眼で過ごせる屈折矯正治療です。このオルソケラトロジーは近視進行の抑制効果が確立しています。
(オルソケラトロジー治療はオルソケラトロジーのページを参照ください)
オルソケラトロジーは世界的にメタ解析研究で、優位に眼軸長の伸展を抑制し、重篤な合併症が生じないと報告されています。約40~60%で近視の進行を抑制すると言われ、近視進行抑制で最も効果があると言われていますが、適応は―4Dまでの軽度の近視に限られます。小児が使用する場合には、しっかりとした親の管理が必要です。
(参考文献)
Orthokeratology for myopia control: a meta-analysis. Jun-Kang Si1, Kai Tang, Hong-Sheng Bi, Da-Dong Guo, Jun-Guo Guo, Xing-Rong Wang Optom Vis Sci. 2015 Mar;92(3):252-7.
Orthokeratology to control myopia progression: a meta-analysis.
Sun Y, Xu F, Zhang T, Liu M, Wang D, Chen Y, Liu Q.PLoS One. 2015 Apr 9;10(4):e0124535. doi: 10.1371/journal.pone.0124535. eCollection 2015.
Li SM, Kang MT, Wu SS, Liu LR, Li H, Chen Z, Wang N.Curr Eye Res. 2016 May;41(5):600-8. doi: 10.3109/02713683.2015.1050743. Epub 2015 Aug 3.
3、多焦点ソフトコンタクトレンズ(保険診療)
多焦点ソフトコンタクトレンズは、一般的には老視(老眼)矯正用のコンタクトレンズですが、様々な多焦点ソフトコンタクトレンズが近視進行抑制の効果があると報告されてきています。近視進行抑制効果は約20~40%ほどで、まだ近視進行抑制効果として確立してはいませんが、オルソケラトロジーの適応のない強めの近視の方などにはお勧めです。
保険診療で行えるのもメリットです。
当院では、低加入(+0.5D加入)や高加入(+2.5D加入)多焦点ソフトコンタクトレンやEDOF(焦点深度拡張型)ソフトコンタクトレンズなど様々なコンタクトレンズの装用を試すことができますので、ご興味がある方はご相談ください。
(参考文献)
Fujikado T, Ninomiya S, Kobayashi T, Suzaki A, Nakada M, Nishida K.Clin Ophthalmol. 2014 Sep 23;8:1947-56. doi: 10.2147/OPTH.S66884. eCollection 2014
Walline JJ, et al. JAMA. 2020. PMID: 32780139 Clinical Trial
Sankaridurg P, Bakaraju RC, Naduvilath T, Chen X, Weng R, Tilia D, Xu P, Li W, Conrad F, Smith EL 3rd, Ehrmann K.Ophthalmic Physiol Opt. 2019 Jul;39(4):294-307. doi: 10.1111/opo.12621. Epub 2019 Jun 10.